セーシェル(プララン島)

 p. 36の下から9行目まで読みました。旧批評の金科玉条である「明晰」に対するバルトの批判の続きです。今日読んだところでは、とりわけp. 34の皮肉たっぷりの文章がユーモラスでした。「どうして物事をもっとシンプルに表現しないのか」という旧批評からの批判は、そのまま彼らに返してやりたい、なぜなら、彼らの文章そのものがまったくシンプルでないのだから、と、バルトは、具体例を挙げて切り返しています。p. 35に入ると、批判のトーンは、原理的な方向に強くなっていきます。作家における「明晰」という問題も、「書くこと」の原理的な考察のなかに置かれます。そこで、バルトは、作家たるもの、ヴォルテールの模倣よりはマラルメの「インク壺の夜」のほうへ、可能な読者の「平均」と安易な関係を結ぶよりは作家自身の「真実」である言葉と困難な関係を結ぶほうへ、断固として向かうべきである、そうして紡がれたエクリチュールこそが「明晰」である、と言っているように思われます。
 さて、いよいよ、この授業も、来週17日で最終回です。テクストの残り部分を、要点を抑えながら、私が解説する予定です。また、8月3日(金)締切のレポートですが、関心のある作家・作品について新旧両批評の比較を試みる、または、適当な具体例が見つからない場合は、関心のある作家・作品について最近の批評を紹介する、でも結構です。なお、作家・作品は、フランス文学に限定しません。分量は2000字程度(上限なし)で、今井メールアドレス宛て、添付ファイルで提出してください(プリントアウトしたものを研究室入り口ポストに提出、も可とします)。