来週からの皆さんによる発表を前に、今日は、「パリ文学名場面集」と勝手に題して、三つの有名な情景を小走りに眺めました。まず「野心」。バルザックゴリオ爺さん』のラストシーン、ラスティニャック君がペール・ラシェーズ墓地の高みから上流社交界地帯に視線を投げながら「さあ、今度は俺とお前の勝負だ!」と啖呵を切るところ。次に「恋」。プルーストの『失われた時を求めて』「スワンの恋」から、スワンがオデットを探し求めて夜更けのイタリアン大通りのレストランをあちこち彷徨うシーン。「けわしい顔つき」で「大またに歩く」スワンの姿がカワイイです(それに続く「カトレヤする」シーンは割愛)。そして、「罪悪…」。カミュの『転落』から、ポン・デ・ザールで奇妙な「笑い声」を聞き「心臓が急にどきどきしだす」シーンと、その二、三年前に二つ川下のポン・ロワイヤルで起きた「事件」を告白するシーン(授業中、ポン・ロワイヤルはポン・デ・ザールのひとつ川下の橋と言ってしまいましたが、間違いでした。ポン・デュ・カルーゼルが二つの間に入ります。ゴメンナサイ)。前に読んだフロベール感情教育』ではフレデリックがポン・ヌフで息を大きく吸い込んで昂揚してましたが、カミュの『転落』ではその川下の二つの橋の上で主人公が暗い記憶を心の底に閉じ込めていたわけです。橋とは、ドラマチックなトポスですね。というわけで、少々こじつけ気味の三題噺で失礼しました。では、また来週。みなさんの発表を楽しみにしています。