今日は、ヴァレリーの講演「デカルト」の続きをp.807の下から9行目まで、読みました。デカルトのCogitoを自己激励の合言葉と捉える、なかなか感動的な部分です。「われ思う、ゆえに、われ在り」という有名な言葉の魅力は、まさにそうした、デカルトの全存在を目覚めさせるような呪文の力のうちにある、とヴァレリーは言っています(charmeには魅力という現代的な意味の他に、呪文という古代的な意味も含まれています)。ここで、ヴァレリーが思い出している、スタンダールがどこかで言っていたというナポレオンのエピソード(軍事の天才ナポレオンも危機的状況に陥った場合、「その時はその時だ」と言って自分を励ましたというエピソード)は面白いですね。こうしたエピソードまで出して、コギトのもつ倫理的な力を評価するヴァレリーの説明はとても新鮮なものに思われます。