今日は、前回の復習(とりわけマラルメの詩『エロディアード』とのintertextualite(間テクスト性)についてやや詳しく説明)をしたのち、ヴァレリーの詩「ナルシスは語る」の第2詩節の終わりまで、読みました。定型詩の約束事や修辞法の基本に触れながら、ゆっくりと読んでいます。「ニンフ、ニンフ、おおニンフよ」という繰り返しは、ナルシスにふられたニンフ=エコー(こだま)のmimesis(模倣)です。ヴァレリーは特にharmonie imitative(模倣的諧調)を好む詩人です。5行目のm'ecoute, ou j'ecouteという箇所におけるアソナンス(ouという母音の反復)とアリテラシオン(tという子音の反復)とがもたらす擬音的効果(露のしずくgoutteの模倣でしょう)、そして客体の私meと主体の私jeのシンメトリーがもたらす鏡像イメージの効果は見事です。第2詩節のラスト3行では、まるい銀色の月が昇って水面にも映っている様子が思い浮かびます。工夫に満ちた詩のテクストを読むのはじつに楽しい経験です。詩の言葉の織りなす濃密なイメージの世界を丁寧に追いかけていきましょう。では、また来週。