最終回

 最終回の今日は、ヴァレリーソネット「鮮やかな火が……」を、1897年の「カイエ」のヴァージョンと比べながら読みました。眠りと目覚めのあいだの微妙な状態をコンパクトに描いた名品だと思います。最後のテルセの脚韻がmer(海)→merveille(「驚異」とか「不可思議」とかの意味ですが、分解すると「海‐目覚め」となります)→veille(目覚め)と続くところは〈眠りの状態=海〉のイメージとあいまって印象的でした。ヴァレリーにとって、夢や眠りは、覚醒時の意識のテーマと同じく(というか表裏一体のテーマとして)、生涯にわたって親しい考察テーマであり続けました。関心のある方は筑摩書房から刊行中の『ヴァレリー集成』第2巻「夢の幾何学」(塚本昌則編訳)を是非ご一読ください。さて、これで今年度のこの授業は終了です。来年度は読み残した『旧詩帖』の長詩群をどんどん(こまかい注釈はあまり気にせずに)読み進めていきたいと考えています。興味のある方はどうぞご参加ください。では、4月にまたお会いいたしましょう。とりあえずは来週24日〆切のレポートを楽しみにしております。