今日は、「ナルシス《断章》」全3部のうちの第2部(第2断章)に入り、第43行まで、読みました。普通の男女の恋愛の虚妄(ナルシスから見ると、それは惨めな虚妄となります)を描いた第23行から第82行までの60行分は、『ヴァレリイの詩』の井澤義雄も「圧巻」と評価しているところです。もちろん誤解なきように言い添えれば、恋人たちの肉体的結合とそのむなしさ、および、恋人たちの追憶とその悲惨(いずれも、ロマン主義的な文学表象の紋切り型)を皮肉の効いた乾いたタッチで描き切ったこの部分は、ナルシスの自己愛の絶対性を浮き彫りにするための、いわば引き立て役的な機能が与えられた部分と言えるでしょう。とはいえ、普通の男女の性愛が淡々と描写されているだけに、ここはシンプルな迫力があります。来週は第82行まで読みましょう。予習をよろしく。