今日は最終回、ヴァレリーの1935年の講演「芸術についての考察」の講演本体部分のラスト(p.78の12行目)まで、読み終えました。ヴァレリーも最後は時間がおしていたのか、かなり急ぎ足の話ぶりであることが伝わってきます。p.76の下のほうで、芸術家の感情生活は作品制作において非常に重要な役割を果たしている、と指摘されています。これは実はヴァレリー自身にも当てはまることで、おそらく、ヴァレリーはこの話をしながら、それは実は私のことだ、と密かに思って苦笑しているに違いありません。また、最後に触れられる「大芸術」の概念はヴァレリーという人の芸術論の根幹をなす考え方です。面白かったのは、ゴンクールの話(日記1878年11月28日の項)として語られる日本画家・渡辺省亭(1851-1918)のパリでのパフォーマンスのくだりです。丸めた新聞紙に火をつけて、濡らした紙を乾かすところを受けてfumiste(暖炉職人、いい加減な人)という言葉が出てきますが、これはつまり縁語ですね。全般に非常に抽象度の高い表現が続くヴァレリーの講演ですが、哲学協会の人々はどのような反応を示すのでしょう。以下の質疑応答は休み明けに読みましょう。次回は10月6日となります。皆さん、どうぞよい夏休みをお過ごしください。