今日は、p.66上から15行目まで、読みました。「芸術家に可能なことというのは、見知らぬ精神のうちに、ある効果を産み出すようななにかあるものを作り上げる、それがすべてです」という言い方はまさにポーの効果理論そのものであることを指摘しました。そのあと、ヴァレリーは、作品の効果発散エネルギーは作家の制作エネルギーとは比べるべくもないものだといいます。たとえば、作曲家は五線譜にフォルティッシモと書くだけで、コンサートホールに百の楽器の大音響をひびかせることができるというわけです。言語芸術でも同じで、ラ・フォンテーヌの教訓詩の一句を少し変えるだけでイメージ(効果)は宇宙的に広がると、ヴァレリーはいっています。楽しい例を挙げたあとで、再び、「芸術とは何か」という一般論に戻ります。その前提として、あるオブジェが人間の手によるものか、そうではないのか、を、人はどのように区別するのか、という問いが立てられています。来週は、そのあたりの議論を読み進めましょう。