今日は、1939年5月13日付「ル・フィガロ」紙に掲載されたヴァレリーの記事「レオナルド・ダ・ヴィンチの文章作品」を読みました。1883年に出版されたジャン=ポール・リヒター編によるThe Literary Works of Leonardo da Vinciが56年後の1939年にリヒターの娘の手によって増補改訂され、再版されたことを記念した新刊紹介記事です。ヴァレリーは青年期にリヒター版を読んで感動した経験があり、晩年にその第二版が出たのは、自分の作家人生の始まりと終わりを画するような出来事として、感慨深いものがあっただろうと想像されます。短い記事のなかで、レオナルドにおける、知識と能力、理解することと作ることの不可分性が強調されていました。文章の最後で、ひょっとすると自分はレオナルドの絵画よりも文章のほうが好きなのかもしれない、とヴァレリーは告白していますが、レオナルドの精神がその力と交わすモノローグは、精神の力に生涯関心を注ぎ続けたヴァレリー自身にとって、知性の劇の汲めども尽きぬドキュメントだったのでしょう。さて、次回からは1935年3月2日のフランス哲学協会でのヴァレリーの講演「芸術についての考察」を読みます。少々ペースをあげていきますので、予習をどうぞよろしく。