今日は、1932年のヴァレリーのエッセー「コローをめぐって」を、ランベール版でp.159右側の下から7行目まで、読みました。息の長い文が連続して出てきますが、ヴァレリーの思考の流れに乗って読んでいきましょう。コローの素描や版画が音楽ときわめて密接に結びつくために、風景画と音響のあいだにいかんともしがたい照応関係が生まれ、絵筆や鉛筆によって描かれたはずの作品をじっと見るうちに、あるメロディや響きが記憶の底からふとよみがえってくることがある、とヴァレリーはいいます。その一例として、ある時、コローの一枚の版画を眺めていたヴァレリーの脳裏に、ワーグナーの楽劇『パルジファル』の一節が鳴って、びっくりしたというエピソードが紹介されていました。建築が歌うというのは『ユーパリノス』のテーマでしたが、今回は、絵画が歌うというわけです。L'Impur vient respirer la fraicheur du matin.という一文は読んでみると十二音節詩句ですね。『パルジファル』第一幕でアムフォルタス王が苦しみの夜を過ごして朝を迎えるシーン。この部分はどうやらヴァレリーのお気に入りらしく、このわずか数小節の内にワーグナーの経験と知が凝縮されている、と絶賛しています。次回(5月11日)は、p.161右側の5行目まで進む予定です。それでは、皆さん、よいゴールデンウィークをお過ごしください。