今日は、p.220の下から9行目まで、読みました。このテクストのタイトルは「レオナルド・ダ・ヴィンチ」ですから、主人公がレオナルドであることは最初からわかっているとはいうものの、テクスト本文においては4頁目の終わりのほうになってようやく「レオナルド・ダ・ヴィンチ」という名前が出ます。そこまではどういう呼び方だったかというと、personnageとかquelqu'unとかcet espritとかhomme extraordinaireとかhomme completとか……つまり、直接的な固有名で名指しをせずに、一般的な、あるいは任意性の高い言い方が用いられていました。こうした非個人的な呼び方は、卓越した精神のひとつのモデルというか、レオナルド的な「万能の天才」の精神の働きのメカニズムを特に強調したいために、ヴァレリーが意識的に採用している呼び方だと思います。こうしたところは若い時の『レオナルド・ダ・ヴィンチ方法序説』の書き方とまったく同じです。こんなところにも、ヴァレリーエクリチュールの一定した部分を読み取ることができるでしょう。次回は残りを片づけます。