今日は、ジャン=ドミニック・レイの論文の残りを、読み終えました。1933年に息子たちが企画したアンリ・ルアール生誕百周年記念展覧会のカタログにヴァレリーは序文を書いているらしく、p.24で、その文章の一部が引用されています。味わい深い文章です。これまでに読んできた「イタリアの芸術」や「似ていることと芸術と」といった文章に通じる「メチエ」重視の考え方が、ここにも読み取れます。論文の一番最後に紹介されているアンリ・ルアールの名文句「絵画では、署名をけっして見てはならない」は、いつぞや紹介した、ヴァレリーの言葉(自分が文部大臣になったら、美術館の絵画の説明書きは全部取り除くだろう、という意味の発言)とそっくりですね。ヴァレリーのこの序文の全体を読んでみたくなりました。それから、事実関係に関することとして、アンリ・ルアールの死後なぜすぐにコレクションは散逸したのか、とか、1933年の展覧会では息子の一人アレクシスが参加していないが、それはなぜか(もう亡くなっていたのか)、とか、素朴な疑問が出てきました。ルアール家はヴァレリーを専門に研究する人間にとっても実に興味深い関心対象です。これから、いろいろと調べてみようと思います。年内ラストとなる次回は、名文「コローをめぐって」から、とくに、ドラクロワと比較してコローを論じている箇所(吉川逸治訳p.126-133あたり)と、ある種の絵画が音楽や詩とつながってくる経験を語っている部分(同p.134-142あたり)を取り上げて、フランス語原文にも注意しながら、読んでみる予定です。