今日は、「パオロ・ヴェロネーゼのフレスコ画」の残りを読み終えました。フレスコ画に描かれた虚構世界のほうは、壮大なオペラの魅惑を発揮しているのに対して、そのように壮麗な装飾に囲まれて暮らす実際の生活は、少々シンプルに過ぎるコメディーでしかなかったろう、という文章(p.150の2段落目)は、芸術が現実を凌駕する虚実反転の妙、実際に別荘で暮らす現実の貴族よりもフレスコ画中の幻のシミュラークルたち(神話に登場する神々)のほうが遥かに見事であるという主客逆転の妙というものを、明確に描ききっていて、本当に見事です。以下、おそらく、ジャコメッリ荘のフレスコ画を描写したものであろう文章が続きますが、ヴィーナスが足をぶらぶらさせているところが具体的にどこなのかとか、「若者」の姿はどうしても女性に見えるとか、もしかすると、ランベールさんが参考として載せているジャコメッリ荘の壁画は、ヴァレリーの描写が示すものとは異なる可能性もあります。こういう疑問は、楽しみとして、いつか実際の壁画を見学することができる機会のためにとっておくとしましょう。さて、授業はあと残り2回となりました。「イタリアの芸術」という文章(pp.170-173)を読みますので、予習をよろしくお願いします。また、29日(水)締切のレポートの作成のほうも、がんばってください。では、また来週。