今日は第29番「気前のよい賭博者」(旧タイトル「悪魔」)の57行目から125行目まで読みました。「悪魔」の異形性、というか、この世のものでない感じは、Son Altesse(殿下)という呼称と、それを受ける代名詞elleのもたらす奇妙さによって、よく出ています。全般に、格調高い古典的長文が多いのですが、その堅固な文体がかえって、息の長い滑稽味を醸し出していると思います。96行目あたりの「昔の怨恨」は、Lucifer=Satinが神によって見離され、堕ちた天使となったことを指しています。タイトルは、102行目以下124行目までの悪魔の大盤振る舞いのセリフを受けていますが、最終段落、主人公の私は次第に幻滅に向かっていきます。「倦怠」に苦しむ人生のテーマが、コミカルな舞台設定で、婉曲的に言及される佳品です。次回、最終段落を読み終えたら、続く第30番「綱」に入りましょう。予習をよろしく。