開講しました

 普通ならば、紹介的な話から始めて、まず序文「アルセーヌ・ウーセイに」を読んだりするのですが、今回は、趣向を変えて、最近の『パリの憂鬱』研究の元気のよさを伝えたいと思って、1993年の(最近というにはちょっと古いですが)ジェローム・テローの研究Baudelaire Violence et poesie, Gallimard, 1993のプロローグに掲げられた「犬と香水壜」の読解を少しだけ紹介しました。「犬と香水壜」は、詩人と読者公衆との断絶に対するボードレールの怒りと苦痛を示すひとつの証拠に還元される単なるドキュメントではなく、まぎれもない一篇の詩として強い力を持っているということ、これが、無害なテクストどころか、読者を罠に陥れる、挑戦的なテクストであるということが、熱く語られています。そして、この挑発に応えなければならない、応えることによって詩人と読者の相互理解のやりとりが始まる。そう、テローは言います(実に熱い言葉で語る研究者ですね)。その熱を百パーセントで伝えることは困難ですが、とりあえず、開講の挨拶がわりに、こういう生きのイイ言葉を紹介させていただいた次第です。今後は、いくつかの詩篇について、テローだけでなく、2003年のマーフィの大著Logiques du dernier Baudelaire, Honore Champion, 2003の議論も時々紹介していきたいと思います。来週は、今日のテローの文章の続きを少し読んでから、「アルセーヌ・ウーセイに」の読みに入るつもりです。予習をお願いします。私だけが延々としゃべっていると必ず皆さん眠くなるでしょうから、おいおい、いろいろな形で授業への参加(テクストの訳読、詩篇の紹介、意見や感想の表明)をお願いすることになるかと思います。授業に参加する意思がおありで、本日欠席された方は、私にメールでコンタクトをとってください(プリント類をお渡しいたします)。それでは、これから、よろしくお願いいたします。
 (なお、このブログでは、フランス語のアクサンが出ませんので、あらかじめ御了承ください。)