最終回

 今日は、1992年のミシェル・アキアンの論文を概観し、「ナルシス〈断章〉」草稿の観察から判明するヴァレリーの詩作技法の特徴三点――(1)脚韻から始めること、(2)転置の多用、(3)入れ替えの多用――について、簡単に追ってみました。(2)と(3)は重なる点がありますので、絞り込めば「脚韻から始める」と「交換の多用」ということになるでしょう。このような制作の実態は、おそらく、ヴァレリーに固有のものではなく、韻文をつくる詩人全般に当てはまる作業特徴ではないかと思われますが、草稿の観察に基づく、こうした基本的な身振りの確認が、詩のより一層の理解のために役立つことは確かでしょう。さて、今年度のこの授業はこれにて終了です。来年度はヴァレリーの散文作品を読もうと思っています。興味のある方は是非ご参加いただければ幸いです。それでは4月に、またお目にかかります。