今日は、p.64の真ん中あたりまで、読みました。ヴァレリーは芸術制作者の能力を高めてくれる親身な教育というものがかつては存在した(エレディアから韻文詩の作り方についての手ほどきを受けたのが自分が受けた最後の教育だったとヴァレリーは回想しています)が、そうしたメチエ(技量)伝授の伝統が、芸術の独自性重視と伝授蔑視の現代にいたって失われてしまった、とヴァレリーはいいます。ヴァレリーが芸術関係の本や話に期待する点(ひとつは享受体験を豊かにしてくれること、もうひとつは、制作の参考になるものを教えてくれること)についての話はひとまず終わり、その後の考察は、より一般的に、芸術作品と制作、芸術作品と享受、という二つの、互いに区別され、独立した軸をめぐって展開されます。このあたりは、若い頃の『レオナルド・ダ・ヴィンチ方法序説』における議論と変わらない「効果理論」の変奏です。次回、「効果」をキーワードとした議論が進みます。では、また来週。