比較断章法(パラレルシュテレンメトーデ)

 先週お配りした「二つのテクストを並べて読む」ことの実践例として、ボードレールの「駄目なガラス屋」というテクストを、まず積極的受容論の観点から、エドガー・ポーの「天邪鬼」と比較し、その形式と内容の類似点に着目して、ボードレールのテクストがポーのテクストのリメイクであることを確認したのち、続いてボードレールの「駄目なガラス屋」をアルセーヌ・ウーセの「ガラス屋の歌」というテクストと消極的受容論の観点から比較し、その形式と内容の相違点に着目して、ボードレールのテクストがウーセのテクストへの反撃であることを確認しました。つまり「駄目なガラス屋」というテクストを、文学史的、詩学史的な新旧論争、美学の戦争における闘争のテクストとして読んでみたわけです。こんなふうに、二つのテクストを並べて読む場合、ストレートなオマージュ的受容の側面もあれば、アンチとしての闘争的受容の側面もあって、研究はすでにテンションあがりっぱなし状態となります。残りの時間で、コンパニョンさんの本からパラレルシュテレンメトーデ(ドイツ語なのは解釈学の本場がドイツだからでしょう)に関する部分を少しだけ紹介し、受講生の皆さんへの課題として、同一作家(同一問題)の二つのテクストの比較断章法による解釈例、ある作家のテクストと別の作家のテクストの比較断章法による解釈例のサンプルを、各自の研究の場で挙げてもらうことにしました。ちょっとやりにくいかもしれませんが、この手続きはそのまま修論の本文に活かされるに違いありません。次回はもう少し、比較断章法の実例について解説してみる予定です。