研究方法における流行の問題

 コンパニョン『文学の第三共和政』の第二部の後半を読み進めています。今日は『ブヴァールとペキュシェ』における歴史・政治の問題という研究の観点について、コンパニョンさんが1980年代の初めに次のように言っていた点に注目しました。「フローベールの政治とは何か。この主題が重要であることに反論はあるまいが、これまで長い間扱われてこなかった 。その理由はおそらく、『ボヴァリー夫人』の作者についての近年の研究が、その作者のうちに、小説の形式と意味の関係を初めて変化させた現代性の先駆者、20世紀文学思想の預言者の姿を求めることに集中し、作品の歴史的・イデオロギー的な側面、同時代の動きに属する側面を置き去りにしてきたからであろう。」つまり、テクスト内在的な研究に偏向し、外在的コンテクスト研究をないがしろにしたきたからであろうというわけです。文学理論の余熱が続く時代の雰囲気が感じられます。その後、歴史・政治への注目は文学研究において普通になりました。コンパニョンさんのこの1983年の著作はそうした流れを作るうえで大きなインパクトをもたらしたと言えます。少し引用の訳を割り振りさせていただきました。ご準備のほど、どうぞよろしく。